石田 博社団法人日本ソムリエ協会 副会長
醤油はもはや世界でもっとも有名な調味料の一つとなったといっても過言ではありません。
フランスのシェフたちも、特に若い世代は、「Soja(=醤油)を」と躊躇なく使っています。和食ブームにより急激に広まった感は否めませんので、ホンモノの醤油はきちんと認識されていないようにも思えます。日本人なら、外国の人たちに、「本物の醤油とは、こういうものだ」と自信持って言いたいですね。
『丸大豆再仕込み醤油 梶田泰嗣』は、色が本当に深い黒みが印象的で、フチにはマホガニー色がみえます。これはまさにエキス分の濃度の高さを示しています。スーパーなどで一般的に市販されているものと比べるとその差は歴然としています。 香りは大変豊かで大豆をはっきりと感じ取ることができます。干しぶどうや杉の木のような印象もあります。加えてクレームブリュレ、熟成させたバルサミコ酢、八角や丁子といったスパイスの香りもあります。
味わいは丸みがあり、やわらかい口当たりです。全体に厚みがあります。おだやかな旨味はまろやかさの中に調和しています。一般的な醤油には旨味が強く感じるものがあり、それが醤油らしいと認識してしまうところが、ありますが、その旨味は付け加えたもので、味わい的には浮いているということが、この丸大豆再仕込み醤油との違いとして感じられます。
この醤油の活用法はシンプル。豆腐、湯葉、長芋、とろろといった味わいの優しく、シンプルなものに、たっぷり漬けて醤油の味わいを楽しんでいただきたいです。最初は少し濃厚で塩味が気になるかもしれませんが、甘みと旨味マイルドな後味となります。
「醤油のつけ過ぎ」の心配がいらない醤油なのです。
フランス料理やイタリア料理といった洋食では、まさに熟成させたバルサミコのような使い方が考えられるのではないでしょうか。
カルパッチョやニース風サラダ、鮮魚のグリル、牛肉のステーキにパルメザンとルッコラ(タリアータ)などに、数滴この醤油を垂らすだけで、その芳醇な風味が味わいに深みを与えてくれるはずです。
石田 博
プロフィール
合同会社 Soupless 代表、レストラン ローブ ソムリエ